65歳以上の女性7割が「冷え症」
暖房のきいた室内や布団のなかなど、他の人は寒さを感じない環境や、通常は身体や手足が冷たくならない状態で、手足の冷えや寒さを感じる症状を「冷え症」といいます。いったん手足が冷たくなると、なかなか回復せず、辛いものです。
厚生労働省の調査では、65歳以上の女性では7割以上、男性でも5割近くが、手足の冷えを訴えているという結果が出ています。
冷え症は体質や生活習慣が原因となっていることも少なくありません。そのため冷え症の改善には、まずは生活習慣を見直すことが大切です。
食べ物から作り出される「熱」
まず、見直したいのは食事です。
私たちの身体を温めている「熱」は、食べ物から作り出されています。体温を保ち、活動するのに必要なエネルギーを生み出す基本的な栄養素は、「炭水化物」、「たんぱく質」、「脂質」です。
「炭水化物」は主食であるごはんやパン、麺類などに多く含まれます。
「たんぱく質」は肉や魚、卵や大豆製品などに含まれています。
「脂質」は、調理のための油や、バター、マーガリンなどに含まれています。
これらをバランスよく摂ることが大切です。
身体を温める食品、冷やす食品
また、食品には身体を温めるものと冷やすものがあると言われています。
主に、冬にとれる根菜類や北国でとれる食品は身体を温め、夏にとれる野菜や南国のトロピカルフルーツなどは、身体を冷やします。
筋肉量の低下も冷えの一因
また、冷えは、筋肉量の減少や、手足などの身体の末端へ血液が正常に循環しない「末梢循環不全」によっても起こります。
身体の熱の多くは、筋肉の活動によって生み出されます。ですから、筋肉量が少なくなると、熱を生み出す力が低下するのです。
また、筋肉は血液を運ぶポンプの役割も担っています。
手足の筋肉が収縮すると血管は圧迫され、筋肉がゆるむと血管が解放され血液が流れます。このように、筋肉が収縮と弛緩を繰り返しポンプの役目をすることで、末梢の血液循環を助けているのです。
だから、筋肉量が減少するということは、末梢の血液循環にも影響するのです。
運動で冷え症を解消
反対に、筋肉量をアップさせることは、冷え解消の一手となります。
椅子に座っての足踏み、椅子の背などにつかまってかかとを上げ下げするなど、室内でできる運動で十分です。
朝の連続ドラマを見ながら、三時のお茶のあと、お風呂の前に、など毎日の習慣として軽い筋力アップの運動を取り入れましょう。
運動して手足までポカポカになると、そのあとの家事なども楽になります。
冷え症の治療
それでも「冷え」が辛い場合、医療機関ではビタミンEの内服薬を処方することが多いようです。ビタミンEは血行を促進し、身体を温める効果があります。
また、ビタミンEを含んだ軟膏や、ヘパリン類似物質配合軟膏など、手足の血行を促進する作用を持つ外用薬(塗り薬)でマッサージを勧めることもあります。
漢方はタイプに合わせた薬を選択
漢方薬を使った治療を行う場合もあります。
漢方では、冷えの原因には次のようなタイプがあるといわれています。
新陳代謝の低下
高齢者に多いタイプ。筋肉は体温のもととなる熱産生を司っています。女性や高齢者、運動不足の人など筋肉量が少ない人は、冷えやすくなります。
末梢循環不全
手足など身体の末端へ、血液が正常に循環しないこと。運動不足や皮下脂肪の増加などが原因となるほか、糖尿病や高脂血症(脂質代謝異常)でも起こることがあります。
自律神経の乱れ
このような状態を改善し、冷えを解消するために漢方薬が使われることもあります。
漢方薬は、その人の体質や症状に合わせて薬を選びます。同じ「冷え」という症状でも、人によって薬が異なります。
改善しない「冷え」は、別の病気が隠れていることも
なかなか改善しない「冷え」の原因として、病気が隠れていることがあります。低血圧や貧血、膠原病、甲状腺機能低下症、閉塞性動脈硬化症などが考えられます。
疲れやすい、冷えがなかなか改善しない、関節の痛み、片方の足が特に冷たい、歩行の際にふくらはぎに痛みを感じるなどの症状がある場合は、医師に相談しましょう。
「 冷え症」に関する信頼できる情報は?
健康長寿ネット 低体温
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/tei-taion.html
金沢医科大学病院の21世紀医療 冷え性の漢方治療