からだにあざ(紫斑)ができたら

<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:星野美穂>

高齢者特有のあざ「老人性紫斑」とは

皮膚や血管の組織が加齢によって衰え、傷つきやすくなったことが原因でできる、高齢者特有のあざです。突然のように現れる赤黒いあざで、触れても痛みの訴えがないこともあります。またご本人が、転んだ、ぶつけたなどの記憶はないと言われることもあります。

皮膚や血管を形づくる成分であるコラーゲンは、加齢とともに減ります。皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層構造となっていて、真皮はコラーゲンの網が張り巡らされ、体全体を守る役目を果たしています。コラーゲンが減って網が弱くなると、皮膚が薄くなり、皮膚の中や皮下の血管も傷つき、出血しやすくなります。

皮下や皮膚内の毛細血管も、加齢によって血管の壁が薄く、もろくなっています。

転んだ、ぶつけたなどがなくても、たとえば誰かに手首をつかまれたとか、衣服とこすれたといった軽い刺激でも、毛細血管が傷つき皮下に出血し、あざとなります。皮膚そのものが薄くなっているため、出血が見えやすくなってもいます。

特に手や足の甲、手首からひじの間などで特に出やすいものですが、全身どこにでも出ると考えていいと思います。

また、紫斑ができやすい方は、紫斑の部分の皮膚がはがれて裂傷になる「スキンテア」を起こしやすくなっています。「痛みがないから」と放置せず、かかりつけ医や看護師に相談してください。

皮膚の柔軟性を保つ保湿とたんぱく質の補給が大切

治療・予防には、皮膚の柔軟性を保つために、医師から処方を受けた保湿クリームをこまめに塗るとよいでしょう。ヘパリン類似物質のクリームやローションには、皮膚に適度な潤いを与え、また皮下に漏れた血液をふたたび吸収されやすくする効果があります。保湿クリームを塗った上にワセリンなどの、皮膚を保護する軟膏を塗り重ねるとさらに効果的です。きちんと保湿を行うと、皮膚の弾力が増して紫斑になりにくくなります。

特定の場所に紫斑ができやすい場合は、柔らかいガーゼなどを当てて保護することも有効です。手の甲などは、手袋などの使用も

体の中からコラーゲンを補うために、食事の中の動物性たんぱく質の量を増やすことも検討してみましょう。

「虐待」をもし疑ったら

紫斑は、手の甲や腕といった見えやすい位置にできやすいものです。高齢者施設で暮らす方では、ご家族が面会の際に発見して「もしや暴力を振るわれているのでは」など、虐待の不安を持たれるケースもよくあります。

確かに、腕をつかむなどの行為で紫斑はできやすいです。「転ばないようとっさにつかんだ」ような場合だけでなく、「何の気なしに触れた」「ご本人が自分の腕を握った」といった場合にも簡単にできてしまうのが老人性紫斑の特徴です。

ご家族と施設の職員の間で、ざっくばらんにあざについて話し合えることが何より大切です。訪問看護師やかかりつけ医なども交え、チームで老人性紫斑についての知識を共有し、スキンケアを充実させましょう。ご本人が笑顔で暮らせていることが何より重要です。 Let's
  

「老人性紫斑」に関する信頼できる情報は?

一般社団法人日本血栓止血学会

純性紫斑・老人性紫斑 

一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会

弱くなった皮膚を守るためのしおり