便が出ない

<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:椎崎亮子>

便秘について

便秘とは、便が大腸~直腸の中にたまってしまい、正常に排出されないことを言います。「何日間排便がないから便秘」ではなく、その人が「いつもより便が出にくい、排便間隔が空いてつらい」と感じていれば便秘と言えます。おおむね、1週間に2回より排便回数が少ない場合に、本人も周りも問題だと感じることが多いようです。

「強くいきむ必要がある」「おなかや肛門の周辺を押さないと出ない」「1回に少量ずつしか出ない」「便が固くて排便時に痛い」なども便秘の症状です。

便秘は大きく、
1.大腸~直腸のはたらき(機能)に原因がある機能性(きのうせい)便秘
2.大腸~直腸のどこかで便の通過が妨げられる器質性(きしつせい)便秘
の2つに分けられます。
1の機能性便秘には、大腸の蠕動(ぜんどう)運動が衰える「弛緩性(しかんせい)便秘」と、大腸が痙攣(けいれん)などの異常な動きをするためにおこる「痙攣性(けいれんせい)便秘」、直腸まで便が下りてきても便意を催さず、排出できない「直腸性便秘」があります。
2の器質性便秘には、がんができて腸が物理的にふさがれたり、腸の病気などの理由で狭窄(きょうさく=狭まること)したりしておこるものです。このほかにも、ホルモンのバランスの崩れでおきるものや、別の病気の治療で服用した薬の副作用によるものなどもあります。

下痢や便失禁とも深く関係する

便秘は放っておくと、食欲もなくなり全身の健康状態を悪くします。また、「下剤を飲むと下痢になってしまう」「便失禁をしてしまう」などの問題もおきてきます。下剤の影響で泥状便が出続けているが、実際は直腸に大きな便の塊がはまり込んでいるような場合もあります。痔や脱肛、腸閉塞といった症状に発展してしまう場合もあります。

また、排便に関係する不快感から、認知症の方では行動の問題(不機嫌になる、拒否的になる、落ち着かなくなる)などが現れることも珍しくありません。

便秘薬の考え方

排便に関して問題がある場合は、消化器を専門とする内科医に相談してみましょう。便秘薬は、市販の浣腸なども含め、自己判断で使用しないほうがよいでしょう。上記のようにさまざまなタイプがあり、それぞれに原因が異なるからです。自己判断で服用した便秘薬が、便秘のタイプに合っていなければ、かえって症状を悪くすることもあります。

便通を良くする食習慣、生活習慣

便通をよくするには、日頃の生活習慣や食習慣が大切です。食事の量をしっかりとること、水分を抱え込んで便を柔らかくしかさを増やす、水溶性食物繊維を含む食品を取り入れること、適切な量の水分を摂取することなどがあげられます。発酵食品を取り入れ、腸内細菌を増やすことも、便の量を安定させるために役立ちます。

また、寝たきり、座りきりにならないよう、体操などを取り入れること、腹部のマッサージなども効果があるようです。

また、便意を催すために、温水洗浄便座を使いすぎるのは、かえって自然な便意を感じにくくする場合もありますので注意が必要です。

また、トイレでは「考える人」の姿勢を取れると楽に排便できます。便器に座ったとき足が床に踏ん張れること、少し上体を前傾できることが大事です。足元に台を置くことや、いきむときに上半身を預けられるバーなどの取り付けも効果的です。
 

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