帯状疱疹

<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:星野美穂>

水ぼうそうのウイルスが原因

帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルスが原因で起きる皮膚の病気です。多くの日本人は子供のころに水ぼうそうを経験しています。しかし水ぼうそうが治ったあとも水ぼうそうのウイルスは完全にいなくなるわけではなく、神経の根っこ(神経節)に潜んでいるのです。

帯状疱疹の原因となるウイルスは、水痘・帯状疱疹(すいとう・たいじょうほうしん)ウイルスと呼ばれています。ヘルペスウイルスの一種ですが、口の周りなどに小さいプツプツができる口唇ヘルペス(単純ヘルペス)とは異なるウイルスです。

神経節に潜んでいる水痘・帯状疱疹ウイルスは、普段健康なときは「免疫」によって抑えこまれています。しかし、疲れやストレス、加齢、病気などで免疫が弱まると水痘・帯状疱疹ウイルスは増殖し、神経を攻撃します。

これが、帯状疱疹です。

神経がピリピリと痛んだら要注意

帯状疱疹が出やすい部位は、お腹や背中などの胴体部分やひたいなど顔面です。

多くの場合、身体の左右どちらかに出現します。身体の両側にまたがって出ることはほとんどありません。

通常、ピリピリ、チクチクとした痛みから始まります。痛みと同時、もしくは数日遅れて痛みの出た部分が赤く腫れ、小さな水疱が出現します。水疱は帯状になり、やがて合わさって大きくなり、表面が破れて潰瘍になります。たいてい激しい痛みを伴います。皮疹が出ずに強い痛みだけ出る場合もあります。

その後潰瘍はかさぶたになってはがれ落ち、3~4週間で治ります。

ウイルスの増殖を防ぐ抗ウイルス薬

帯状疱疹の治療には、抗ウイルス薬が使用されます。ほとんどの場合内服薬が処方されますが、症状が重い場合は入院して抗ウイルス薬を点滴することがあります。

抗ウイルス薬とは、ヘルペスウイルスの増殖を抑える薬です。発症初期、できるだけウイルスが増える前に服用するほど効果が期待できるといわれています。

帯状疱疹の治療に使用する抗ウイルス薬には、現在「ソビラックス」「バルトレックス」「ファムビル」という3種類の薬があります。ゾビラックスは1日5回、バルトレックス、ファムビルは1日3回、服用する必要があります。抗ウイルス剤の効果が実感できるまでには、2~3日かかることもあるため、効果が表現れないからと自分で判断して勝手に薬を止めてしまわないように注意しましょう。

また腎臓が悪い人では薬の排泄が遅れ体内で薬の濃度が高まることで、意識がもうろうとしたり、痙攣を起こすことがあります。腎機能に問題がある場合、薬の量や1日の服用回数を減らす必要があるので、事前に医師に伝えましょう。

痛みは我慢しない

痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤を使います。強い痛みが続くと、神経がそれを記憶してしまい皮疹が治ったあとも痛みが長く続く「帯状疱疹後疼痛」の原因になることがあります。それを防ぐためには、抗ウイルス剤とともに、消炎鎮痛剤もきちんと服用することが大切です。

特に痛みが激しい場合は、痛みに関わる神経の周りに局所麻酔薬を注射して痛みを取る方法(神経ブロック)もあります。また、コデイン、モルヒネなどのオピオイドと呼ばれる内服薬を使うこともあります。

痛みは我慢せず、医師や看護師に率直に伝えてください。

50歳以上はワクチンで予防可能

帯状疱疹の予防として、現在50歳以上の人に水痘ワクチンを打つ方法が認められています。

現在使用できるワクチンは2種類あり、1つは、水痘生ワクチン、もう1つはサブユニットワクチンと呼ばれています。

水痘生ワクチンは、小児用の水痘ワクチンがそのまま帯状疱疹の予防に用いられたものです。健常人に対する安全性が確立されており、接種は1回だけですが、予防効果は約50%です。また、帯状疱疹のリスクが高い白血病、抗がん剤使用中、 免疫抑制療法中、AIDSなどの免疫不全の患者さんには使用することができません。

サブユニットワクチンは、そうした免疫不全の患者さんへ接種することができますし、50歳以上の健常人で97.2%の予防効果を示しています。しかし、2回の接種が必要ということに加え、副反応が比較的多いという報告があり、安全性には注意が必要です。

ワクチンを打つかどうか、どちらのワクチンを選ぶかについては、主治医とよく相談してメリットデメリットを考えて選ぶ必要があります。

免疫向上で発症を防ぐ

帯状疱疹は身体が疲れているときに発症しやすい病気です。発症したら休養をしっかりとり、無理な運動は避けるようにしましょう。

バランスの良い食事で栄養状態を改善させることも身体の抵抗力をあげるために重要です。

入浴やシャワーは制限する必要はありません。暖めると痛みが和らぐことが多いようです。

また、帯状疱疹を発症している人に接触しても、帯状疱疹が移ることはありません。ただし、水ぼうそうに罹ったことがない人は、水ぼうそうを発症することがあります。帯状疱疹を発症している場合、水ぼうそうの経験のない幼児や妊婦との接触は控えたほうが良いでしょう。

帯状疱疹は放置しておくと症状が悪化するばかりでなく、ウイルスにより神経が傷つけられ、皮疹が治ったあとも痛みが長く残ってしまうこともあります。 帯状疱疹かなと思ったら、すぐにかかりつけ医か皮膚科を受診しましょう。

帯状疱疹に関する信頼できる情報は?

日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ヘルペスと帯状疱疹

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa5/q01.html

健康長寿ネット 帯状疱疹

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/taijouhoushin/index.html