冬の脱水

<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:星野美穂>

ご注意!冬の脱水

脱水、というと、夏場の熱中症での脱水のイメージのほうが強いですが、実は冬も、脱水を起こしやすい時期です。特に高齢者は脱水になりやすく、寒い時期に流行するインフルエンザや胃腸炎は脱水を起こす原因になります。 

脱水とは、平たく言えば、からだから水分が失われた状態のことです。単に水分が失われるだけではなく、体液のなかに含まれる塩分やミネラルといった電解質も失われ、バランスが崩れます。

脱水になると頭痛や血圧低下、せん妄などの意識障害といった症状が現れますが、何より怖いのが、血液が濃くなり血栓(血のかたまり)ができて心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性があることです。

脱水の兆候を知り、早めに対処することが大切です。

水分の補給と排出のバランスが大事

私たちは、すべての食物と飲料水から水分を得ています。また、食物を、からだを動かすエネルギーに変える代謝の過程でも、水分が生成されます。

一方で、水分は、尿、便、汗、涙などとして排出されます。呼気(吐く息)の中にも水分は含まれます。目には見えませんが、皮膚表面からも常時水分が蒸発しています。

一般成人の場合、からだに入る(補給される)水分は約2.5リットル、からだから出ていく(排泄される)水分も、約2.5リットルです。

このバランスが崩れると脱水になるのです。

冬場の乾燥と暖房に注意

冬場は空気が乾燥しているため、病気ではなくても、皮膚や呼気からの水分蒸発量が増え、脱水しやすくなっています。一方、気温が低いため喉の渇きもあまり感じず、水分の摂取量は少なくなります。
さらに、長時間こたつに入っている、エアコンや電気ストーブをつけっぱなしにしている、厚着をしすぎてかえって汗をかくなど、脱水しやすい条件がそろっていることになります。

また、インフルエンザなどで発熱すれば、その分呼気や皮膚から出ていく水分が増えます。その一方で食欲が落ちますので、摂取できる水分量が減ります。

感染性の胃腸炎では、下痢・嘔吐で大量の水分が出ていきますが、食べること・飲むことが難しくなり、脱水状態になりやすくなります。

脱水のサインは?

脱水がおきたときの症状を下記に記します。

下に行くほど重症になります


(1)のどの渇きを訴える(高齢者では喉の渇きを感じにくくなっていて、訴えないことも多い)
(2)口のなかが乾燥して口臭がする、口腔内の不快感を訴える
(3)皮膚表面がかさかさした感じになる
(4)痰がからんで切れにくくなる、咳が多くなる
(5)脇の下や鼠頸部(股)の皮膚がカサカサした感じになる
(6)手の甲の皮膚をつまみあげると、すぐに元に戻らずゆっくり戻る
(7)目が落ちくぼんで見える
(8)尿の量があきらかに少ないか、尿が出ない
(9)傾眠(ウトウトと眠ってばかりいる)状態になる
(10)涙が出ず目が乾いた感じになる
(11)血圧が下がり、脈が弱く・速くなる

水分+電解質の補給を

脱水に気が付いたら、口から無理なく水が飲める場合は経口補水液(OS-1など)を摂取します。嚥下障害があって水でむせる場合は、ゼリータイプのものもあります。

脱水状態のときに、電解質が含まれていない水やお茶、ジュースなどで水分摂取すると、

体液が薄くなり余計に排泄が促されてしまい、脱水を改善することができません。

必ず、経口補水液などで電解質も一緒に補給する必要があります。

もし、意識がない、飲み込めないなど口から水が摂取できない状況ならば、医療機関に連絡しましょう。

脱水は、治療よりも予防が大切

高齢者は、1日2リットルの水を摂る必要があると言われています。そのうち、3食の食事から摂れる水分が約1リットル。もう1リットルは水やお茶などで摂ることになります。

一度に大量に飲むよりも、少しずつ口にしたほうが飲みやすくなります。ペットボトルに1日に摂るべき必要量を入れておいて、1日のうちに何度か、少しずつコップに注いで、こまめに水分を摂るように心がけましょう。

      

脱水 に関する信頼できる情報は?

健康長寿ネット 脱水症

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/dassui.html

かすかべ生協診療所 脱水症について

http://www.kasukabe-sin.net/think/th04.html

日本経腸栄養学会雑誌 総論 栄養管理における体液状態の評価

日本経腸栄養学会雑誌 総論 栄養管理における体液状態の評価

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/32/3/32_1126/_pdf