睡眠・食事・保温が治療の基本
風邪(かぜ)は、鼻やのどにウイルスなどの微生物が付着し、粘膜の細胞内に入り込んで増殖することで発症します。
風邪をひくと、熱が出たり、咳やくしゃみ、鼻水、痰などが出ますね。これらは、からだがウイルスを排除しようとする、大切なしくみです。
熱が出るのは、体温を上げることで白血球などの免疫細胞が活性化され、よりウイルスと戦いやすくなるからです。鼻水や痰は、鼻粘膜、気管からの分泌物によってウイルスを押し流します。咳やくしゃみもウイルスを体外へ物理的に排出するためのものです。
ですから、からだにウイルスが入り込んでしまったら、免疫力=白血球の力が最大限に発揮されるように環境を整えることが、風邪に対する一番効果的な治療法といえます。
つまり、
(1)安静にして、睡眠をしっかりとる
(2)栄養バランスの取れた食事をする
(3)からだ(特に体幹部)を冷やさないようにする
ことが、風邪を治すための基本となります。
「風邪薬」は対症療法
若い人では体力がありますので、まったく薬を飲まずに安静にして、自分の免疫力だけを頼りに治すこともできます。
ですが、体力のない高齢者では、熱や咳などの症状のせいで体力を消耗し、免疫力がさらに下がって二次感染を招いてしまうことになりかねません。
その意味で、適切に症状を抑える「対症療法」が重要になります。
対症療法とは、いわゆる「風邪薬」のことです。
風邪薬は、熱、のどや鼻の炎症、くしゃみや咳、鼻水などを軽減するためのお薬です。それぞれの症状に応じた薬が単独で出されることもありますし、総合感冒薬は、風邪の諸症状を抑えるさまざまな薬効成分を混合したものです。
風邪薬は医師が処方するものもありますし、市販薬として薬局で購入できるものもあります。
風邪が寝たきりのきっかけにもなる
高齢者が風邪をひいたときには安静も大事ですが、できるだけ日常の生活を送れるように頑張ることも大事です。よく「2、3日寝ていれば治る」と言われますが、高齢者は「2、3日寝ていること」で、足の筋肉が衰えて廃用症候群(過度に安静にすることで起き上がれない、歩くことができないなどの症状が起こる)につながってしまうことがあります。ふとした風邪をきっかけに寝たきりになってしまう方もいらっしゃるのです。
そのため、なるべく早く回復して日常生活が送れるように配慮した治療を行います。
つまり「風邪薬」を上手に使い、熱や咳、のどや鼻の炎症を軽減することが大切です。
風邪には効かない抗生物質
少し前まで、風邪をひくと抗生物質も一緒に出されることがありました。
患者さんのなかにも、「抗生物質を出してください」と医師に頼む方がいらっしゃいました。抗生物質は細菌には効果がありますが、ウイルスを殺すことはできません。
抗生物質は、肺炎など風邪を引き金にして起きた、細菌による感染症を治療するためのお薬です。
抗生物質をむやみに使うことで、抗生物質が効かない細菌(薬剤耐性菌)を増やしてしまうことから、最近では風邪に抗生物質を出すことはほとんど行われていません。
ただし、高齢者で肺炎などの感染症になりやすいと判断されている人では、あらかじめ抗生物質を処方されることもあります。
注意して使いたい、高齢者の風邪薬
高齢者は腎臓や肝臓などの機能が弱まっていたり、薬に対する感受性(薬の効き方)が若い人と異なっていたりして、思わぬ副作用が出る場合があります。
また、持病がある方では、持病の薬との飲み合わせに十分注意が必要です。
高齢者はできれば総合感冒薬ではなく、1つ1つの症状を適切に抑える薬を処方してもらうのが、副作用を抑える上でも良いようです。
介護する家族などは、普段服用している薬を医師・薬剤師にきちんと伝えたうえで、風邪薬を服用中は、いつもと変わった様子がないかを観察し、少しでも変化がある場合は医師に伝えてください。
「風邪」に関する信頼できる情報は?
日本呼吸器学会 かぜ症候群
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=2
日本医師会 健康の森 かぜとインフルエンザ
http://www.med.or.jp/forest/check/kaze/01.html
第一三共ヘルスケア くすりと健康の情報局 風邪(かぜ)の対策
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/01_kaze/index2.html
厚生労働省 広報紙「厚生労働」 一人ひとりの心がけが大切 抗生物質・抗菌薬の正しい使い方
https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2018/09_01.html