医療の集いin都留高校   講演記録第4回

<22020年9月26日山梨県立都留高等学校医療のつどいより 文:星野美穂>

上野原市立病院の看護師、志村はるかさんは、看護師資格に加えて、特定ケア看護師の資格を持っています。
退院後の患者さんの生活を見据えた病院看護師の関わりに加えて、看護師という資格の、将来の可能性についてお話しをされました。

病院看護師の機能と役割
―入院中から退院後の生活を考える―


志村はるか(上野原市立病院特定ケア看護師)

 

卒業して20年。平成12年度卒業生です。

私が働いているのは、地域医療振興協会上野原市立病院です。地域の拠点病院として急性期から回復期、慢性期まで対応しています。病棟は、内科外科混合病棟、内科病棟、地域包括ケア病棟の3病棟があります。

 

法的に定められた看護師の役割

今日は、上野原市立病院の病院看護師の機能と役割について話をします。

当院では看護師は、外来、内視鏡室、透析室、手術室、病棟に配属されています。また訪問看護師や退院調整看護師もいます。それぞれ所属先によって仕事は異なりますが、業務内容的には法律で定められた範囲のものになっています。

ちなみに、看護師の役割は「保健師助産師看護師法」で定められています。

この法律で定められた看護師の役割は、

①医師の診療や診察の補助
②疾患や怪我を抱える人の医療的ケア
③患者さんや家族の精神的なケア

の3つです。

入院時から退院後の生活を見据えて関わる

病棟看護師は、入院時から退院後の生活を見据えてかかわりを始めることが多いです。入院後早期から患者さんやご家族に今後どうしたいか、どこで生活して行きたいなどの希望を確認し、患者さんの状態を見てゴールを設定します。

患者さんご自身の想いを尊重して関わっていきたいと思っていますが、意思表示困難な患者さんが多く、介護をする家族がこれからどうするかを決めることも多いのが現実です。状態が悪くなると、言葉が発することができなくなったり、意思表示が困難になります。本当は家に帰りたいのに、施設に行かざるを得ないということも少なくありません。だから意思表示ができなくなる前に、今後どこで生活して行きたいか、死ぬときはどんな風に死にたいかという人生設計を、事前に家族と話しておくことが大事だと、今は言われています。

一人暮らしの高齢の患者さんが入院してきたときには、入院当初から、退院後も同じように一人で生活できるか、そのためにどういう支援が必要になるかということを、ご本人、ご家族を交えてサポートを考えていきます。

退院後、高齢者施設やリハビリなど専門の病院に転院することが必要だということになれば、地域連携室の看護師が関わります。地域連携室は、退院調整を専門にする看護師や社会福祉師士が在籍し、転院先の相談にのったり必要なサービスを紹介するなどの業務を行っています。

自宅で安心して過ごすための病院看護師の支援

患者さんが自宅に帰る前には、多職種カンファレンスを開くことがあります。

多職種カンファレンスとは、病院の主治医や看護師、リハビリの担当者、栄養士、薬剤師、患者さん、ご家族、そして在宅に戻ってから関わっていくであろう訪問看護師や在宅での主治医となる医師が一同に集まって行われる話し合いです。患者さんが家に帰ってから困ることがないように、さまざまな職種が意見を出し合い、知恵を絞ります。

退院指導は、家でも医療行為をしなければならない方に対する指導です。

たとえば、糖尿病でインスリンの注射をしなければいけないという人には、インスリンの管理や注射の打ち方などを細かく指導します。

患者さん本人が高齢だったり、手が不自由だったりということであれば、ご家族にも注射のやり方を指導して、家に帰っても困らないような支援をしています。

看護師の業務の幅が広がる新しい資格

私は看護師という分野だけでなく、特定ケア看護師という名称で働いています。

特定ケア看護師とは、看護師免許に加えて、「特定行為」の研修を終了している看護師のことです。

以前は、看護師は法律上、患者さんの状態の変化をその都度医師に報告して、指示や判断を仰がなければなりませんでした。しかし現在は、特定行為研修を終了した看護師であれば、予め策定した「手順書」に基づき、自分の判断で特定行為を行えることになっています。

特定行為研修制度ができたことにより、看護師の働き方や可能性が広がったということです。

私は、現在は病院内で活動していますが、こうした資格を持つ看護師は今後、在宅医療にも大きな需要があると思っています。ほかにも、認定看護師や専門看護師などの看護資格があり、診療看護師も増えています。国が認めた新たな制度で、大学院の修士課程において、医学の知識と初期医療に関する実践を修了した看護師のことです。

アメリカでは医師の指示を待たずに、一定のレベルの診断や治療を看護師が行うことができるナース・プラクティクショナーという資格があります。

看護師資格はゴールではなく、さらに先の選択肢もあるということも頭に入れて置いていただけたらと思と思います。

回り道しないと見えない景色もある

看護師は、一度手に職を付けると、どんどん色んなことをしてみたいという人が多いです。仕事を辞めて海外に留学する人もいます。さまざまな経験をして、たくさんの人と出会って、豊かな人生を歩むことが、その人の魅力になります。まっすぐ突き進むだけが良いことではなく、回り道しないと見えない景色もたくさんあります。

何よりも、皆さんの人生を楽しんで、頑張ってくれたらと願っております。

最後に、自分たちが知らない良いところが地元にはたくさんあるということをお伝えしたいと思います。今すごく狭い地域で活動してきて、都会に出たいという思いもあると思います。今は気が付かなくても、もっと大人になってから気が付く良いところが大月にも上野原にもあります。

一度はこの地から離れることもあると思いますが、将来、ここに戻って来て、この地の医療の世界で活躍されることを期待しています。