訪問看護師の小林さんに、病院看護師とは異なる訪問看護師の仕事についてお話ししていただきました。
患者さんの自宅は「バーチャルホスピタル」であり、それを多数の医療職・介護職が支えています。
その連携が重要です。
今回は、連携により自宅で生活できるようになったお子さんの事例を紹介していただきました。
地域における訪問看護師の活動
小林博子(公益社団法人山梨県看護協会、つる訪問看護ステーション)
公益社団法人山梨県看護協会、つる訪問看護ステーションで所長をしている小林です。
私は病院で働く看護師ではなく、利用者の家を訪問し看護ケアを提供している訪問看護師です。
上條先生とは同級生でしたが、在学中は知り合うことはありませんでした。
この地域の在宅医療に、上條先生と共に看護師として関わらせていただいております。
訪問看護師とは
みなさんは訪問看護師というとどんなイメージをもっているでしょうか?
訪問看護とは病気や障害を持った人が住み慣れた地域や自宅で安心して療養生活を送れるように、訪問看護師が自宅を訪問し、主治医や関係機関と連携を取り、適切な判断に基づいたケアとアドバイスで24時間365日対応し、在宅療養者を支援する専門的サービスのことであると謳われています。
当訪問看護ステーションは、大月市、都留市、西桂町と広域に訪問看護を行っています。ゆりかごから墓場までと例えられるように、赤ちゃんからご高齢の方まで幅広い年齢の方々にご利用いただいています。ターミナルと呼ばれる終末期、人生の最後の関わりを家で看取る方もいらっしゃいます。
訪問看護に重要なのはチーム形成
訪問看護の一例を紹介します。
脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)という病気のお子さんがいました。
腰の周囲の神経を巻き込んでこぶがあるため、将来的に歩くことができないと考えられています。
頭も水頭症という病気のため、頭の中に管が入っていて、頭の中の圧力が大きくならないよう調節しています。
また、おしっこもいずれは自分で排泄することができなくなるため、管を入れておしっこを出すようになります。
便は、ママが毎日浣腸をして出しています。
生まれた時から何回も手術を行い、パパもママも大変悩み心配し、やっと家に帰ってきたお子さんです。退院した時から訪問看護師として関わらせてもらっています。
この子を在宅で迎えるに当たり、まず病院で本人、両親、看護師、医師、ケースワーカー、市の保健師とカンファレンスを行い、在宅に必要なサービスについて検討しました。
在宅療養はチーム形成が必要であり、多職種で本人、家族をサポートして行きます。
利用者それぞれの状態により、形成されるチームの職種に違いはありますが、本人、家族を支えるための多職種で連携を図ります。医療、介護の連携はとても重要です。
家での生活が始まり、困りごとがあった場合には、市役所の保健師、福祉課と連携を図ります。
からだについては主治医に相談し、不安の軽減を図っています。
住み慣れた我が家で不安なく生活していくための連携を
今は、一緒にお風呂に入れたり、ママが買い物に行くときには、一緒に留守番をしています。
ママの不安が大きいので話をじっくりと聞き、不安が軽減できるよう支援しています。
現在、この子は3歳になりました。リハビリにも週1回通っています。
腕の力がとても強くなり、這って階段を上るリハビリを行っています。
家の中も這って移動しているので活動範囲は広がっているところです。
この子はいずれ保育園にも通園できるようになるでしょう。そうしたら保育園、さらにその先は小学校との連携も必要になってきます。
この子が自宅で楽しく暮らしていけるよう、ママとパパが安心して毎日が送れるよう、これからも支援を続けていきたいと思います。
生活そのものを支える訪問看護師
私たち訪問看護師は病院という建物の中でなく、多職種が連携したバーチャルホスピタルの中でその役割を担っています。住み慣れた地域、住み慣れた我が家で不安なく生活できるよう、医療、介護の連携を図っています。
からだのことだけではなく、生活そのものの心配事にも相談にのり、その心配事が軽減できるようアドバイスを行います。その人がその人らしく自分の人生を全うできるよう寄り添いながら、共に同じ時間を共有できることをうれしく思いながら訪問しています。
みなさんと一緒に仕事ができることを楽しみにしています。
ぜひ医療の現場に来て欲しいと願っています。