喘息

<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:星野美穂>

喘息は気道の慢性疾患

喘息は喘鳴(ぜいめい:ぜいぜい、ヒューヒューなどの呼吸音)を伴う呼吸困難、胸苦しさ、咳などの発作が、反復して起こる病気です。喘息の発作は、タバコの煙や冷たい空気を吸うなどちょっとした刺激で起こります。刺激により、空気の通り道である気道が腫れて、空気が通り難くなってしまうのです。

以前は、この発作を抑えることが治療の中心でしたが、現在では「発作を起こさない」治療が中心となっています。

喘息の患者さんの気道は、発作が起きていないときにも炎症が存在します。発作を起こさないためには、発作が起きていないときにも予防薬を継続的に使用し炎症を抑えることが重要です。

喘息は、気道の慢性的な炎症であり、長期的な管理が必要な病気です。

成人の喘息死の90%以上が高齢者

喘息と言うと、「子供の病気」とイメージする人も多いでしょう。でも子供ばかりでなく、実は高齢者の発症も多い病気です。

また、喘息による死亡は年々減っていますが、ゼロにはなっていないのが現状です。そして成人の喘息死のうち、90%近くが60歳以上の高齢者です。

高齢者の喘息では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や心不全などを合併しているケースが多く、診断や治療が難しいケースがあります。また、薬の必要性や使い方が分かっていないことから、薬が上手く使えておらず、コントロールが上手くいっていないこともあります。

喘息という病気を正しく理解し、薬の使い方を見直すことで、発作を起こさず、健康的な生活を送ることができます。

「出火予防」と「鎮火」、2種類の薬

喘息の薬は「発作を予防する」ものと「発作を鎮める」ものの2種類があります。これらの役割を理解して、正しく使うことが重要です。

喘息の治療の目的は、発作を起こさないことです。

喘息の発作を火事に例えると、喘息の患者さんの気道は、火事(発作)が起きていないときにも種火(炎症)がくすぶっている状態です。種火を抑え、火が出るのを予防する、つまり発作を予防する薬が吸入ステロイドと長期作用型気管支拡張薬と抗アレルギー薬です。(長期管理薬)です。

一方、火事(発作)が出たときは、水をかけて火を消す(発作を鎮める)ことが必要です。

鎮火のための「水」の役割をするのが、短時間作用性β2刺激薬(発作治療薬)です。

喘息の治療には、大きく分けて、この2種類の薬を使用します。

発作を予防する薬(長期管理薬)

 吸入ステロイド/長時間作用性β2刺激薬/ロイコトリエン受容体拮抗薬/

 抗アレルギー薬/テオフィリン徐放薬、抗IgE抗体など

発作を鎮める薬 (発作治療薬)

 短時間作用性β2刺激薬/吸入抗コリン/経口ステロイド/テオフィリンなど

喘息は、完全に治すことが難しい病気です。そのため薬を使いながら、コントロールし、発作が起こらない状態を長く続けることが治療の目標となります。

コントロール状態の評価は、発作治療薬の使用頻度が目安となります。喘息の発作が週1回以上、もしくは発作治療薬の使用が週1回以上ある場合は、コントロールがうまくいっていないと考えます。かかりつけ医、もしくは専門医に相談しましょう。

こんなときは直ちに受診を

季節の変わり目は喘息の発作が出やすいといわれています。特に昼間と朝・夕の気温差が大きい時期は、温度差が刺激となり発作を引き起こしやすくなります。

喘息の発作が起きたとき、苦しくても横になれる程度なら発作治療薬を吸入して様子をみます。1回1~2噴霧で、20分おきに3回(1時間)使用しても改善が見られない場合、

医療機関を受診しましょう。

また、歩行や会話が困難な場合、以前にも意識を失うような発作を起こしたことがある場合、普段から経口ステロイド薬を使用している場合には、直ちに医療機関を受診することをお勧めします。

使えていますか?吸入薬

吸入ステロイドやβ2刺激薬を吸入するという治療法は、パウダー状の薬を吸い込むことで、患部である気管支や肺に直接薬を届けることができるというメリットがあります。ただし、正しく使用しないと薬が気道に吸入されず効果が得られないばかりか、薬が口の中に残り、口内炎など副作用を生じやすくしてしまいます。

吸い込む力が弱くなった高齢者では、薬が上手く吸い込めていないこともあります。また、使い方をきちんと理解せずに、自己流で使っていることも少なくありません。

薬を使っているのに効果が得られない場合、副作用が気になる場合は、薬剤師に相談して、吸入器の使い方を確認してもらってください。

解熱剤は熱を完全に下げて治すという考え方では使いません。

「辛いときに少し熱をさげて、心身を休ませる」ためと考えて使います。熱が高くてよく眠れてない、食欲が出ないなどの場合に適宜使うと効果的です。使い過ぎて体温が下がりすぎると、「戦う力」を奪ってしまいます。市販薬であっても、できるだけ、医師に指導を受けて使うようにしましょう。

喘息に関する信頼できる情報は?

国保旭中央病院 熱がでるとき

厚生労働省 e-ヘルスネット 喘息

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-022.html

国立成育医療研究センター 気管支喘息(ぜんそく)

https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/allergy/asthma.html