発熱したときの対処法

<監修:上條内科クリニック 院長・医学博士 上條武雄 / 文:星野美穂>

発熱、でもあわてないで

新型コロナウイルスの話題でもちきりの昨今です。熱が出ると「新型コロナウイルスに感染したかも?」とあわててしまいがちです。

でも、落ち着いてくださいね。発熱などのかぜ症状が出たとしても、現時点では新型コロナウイルス感染症以外病気である場合が圧倒的に多い状況です。発熱してすぐ、熱がどんどん上がっているときは、からだが入ってきた異物(細菌やウイルスなど)と闘う準備をしているのです。そのとき無理に動かすと余計にからだに負担がかかってしまいます。自宅でからだを楽にする応急処置をしながら、病院に連絡して指示を待って下さって大丈夫です。

今回は、風邪などの感染症による発熱のメカニズムと、発熱したときの対処法について取り上げます。

発熱はからだが病原菌と戦う準備

感染症とは、ウイルス、細菌、原虫などの病原体が体に入ってくることによって起こる病気です。風邪やインフルエンザ、そして今問題となっている新型コロナウイルスも感染症です。

感染症による発熱は、からだが病原体と戦うための臨戦態勢を整えているということです。

感染症の原因となる病原体が体内に入ってくると、免疫を担当する白血球がそれに反応してサイトカインという物質を出します。これによって脳に「敵が来た、臨戦態勢を整えろ」と知らせます。

すると脳から筋肉と血管を収縮させるよう指令が出ます。皮膚表面に近い血管が収縮するとそこから体温が外に逃げにくくなります。また、別の筋肉に震えを起こして熱を生産する指令も出されます。この2つの働きで体温が上がるのです。
白血球が病原体と戦う温度は、病原体が活動したり増殖したりするのに適当な温度より高いので、体温をあげることで白血球が働くのに有利な状況を、自分のからだが作り出しているのです。

これが感染症による発熱のしくみです。

ほかにも、膠原病(リウマチなどの自己免疫疾患)、悪性腫瘍(がん、白血病など)が発熱の原因となることがあります。 

持病として膠原病やがんのある方では、発熱がある場合の対処法や発熱の原因が持病かそうでないのかの見極めポイントなどを、あらかじめ医師に聞いておきましょう。

いきなり解熱剤はNG

発熱したときに、実はやってはいけないことは「いきなり解熱剤を飲ませてしまう」ことです。せっかくからだが外敵と戦おうとしているのに、体温を強制的に下げてしまえば、城の外堀を自ら埋めて城門を開いてしまうようなもの。必要なのは、からだを援護して敵と戦いやすい環境を作ってあげることです。湿性の咳で、気道の粘膜が細菌感染を起こしている場合には(副鼻腔気管支症候群など)、抗菌剤(抗生物質)が投与されます。感染がなくなれば気道の粘膜の腫れが引き、痰も減少します。

悪寒があれば温める

体温が上昇を続けていて、ゾクゾク、ガクガクするような寒気がある場合(悪寒)は、着衣やふとんを重ねて体を温めます。必要に応じて、電気毛布や湯たんぽを使ってもかまいません。

手足が冷たければ、もう少し温めて大丈夫。ただし、汗をかきはじめたら、温度を下げるタイミング。「温めすぎ」で熱がこもる(こもり熱*)こともあります。ポイントは「本人ができるだけ気分よさそうに眠れる」塩梅を保つことです。

こもり熱*=主に高齢者や赤ちゃんなど体温調節がうまく働かない場合に、衣服やふとん類をたくさん着すぎて熱がこもってしまい、体温が高くなっている状態を指す。

水分補給はこまめに

発熱すると、からだが脱水状態に傾きやすくなります。誤嚥に注意しながら、少しずつ、こまめに水分補給をしましょう。大量に冷たい水を飲むのはNGです。ORS(経口補水液*)や薬局で売られているOS-1などを、室温で飲ませるようにします。

市販のスポーツ飲料で、人工甘味料の入っているものは、お腹がゆるくなることもあり、下痢など消化器の症状がある場合は特に注意が必要です。下痢をしてしまうと、かえって脱水してしまうことがあります。また、経口補水液は塩分が入っているため、腎臓病の方などナトリウム・カリウムの制限のある方は医師から制限されている場合があります。あらかじめかかりつけ医に使ってよいかを聞いておくとよいでしょう。

経口補水液*=電解質と水分を効率的に吸収できる組成の飲料水のこと。自宅でも作れる。水4リットルに塩3グラム、砂糖(できればブドウ糖)40グラムを加える。少量のレモン汁かクエン酸を入れると飲みやすくなる。ネット上で検索すると、果汁やトマトジュースを使ったレシピなども見つかる。

39度を超えるときは要所を冷やす

氷嚢やアイス枕で頭を冷やすのは「冷やすと気持ちがいい」場合だけで十分です。冷やして逆に悪寒がするような場合は冷やしてはいけません。

からだが火照って熱く、辛い場合は、頭ではなく、そけい部(太もものつけね)や脇の下に、タオルでくるんだ保冷剤などを当てて冷やします。太い血管が体表面に出ている部分ですので、効率的に体を冷やすことができます。本人が冷たがるようであれば、はずします。

解熱剤を使うタイミング

解熱剤は熱を完全に下げて治すという考え方では使いません。

「辛いときに少し熱をさげて、心身を休ませる」ためと考えて使います。熱が高くてよく眠れてない、食欲が出ないなどの場合に適宜使うと効果的です。使い過ぎて体温が下がりすぎると、「戦う力」を奪ってしまいます。市販薬であっても、できるだけ、医師に指導を受けて使うようにしましょう。

ただちに医療機関に連絡が必要な場合

たとえ微熱であっても、次のような症状がある場合は、直ちに主治医に連絡するか緊急受診が必要です。

★意識状態が悪くぐったりしている

★呼吸困難がある(ハアハアしている)

★激しい頭痛を訴える

★激しい腹痛や吐き気、嘔吐、下痢がある

★全く水分摂取ができない

★黄疸(白目が黄色くなったり、紅茶のような尿が出る)がある

★尿が出ない、または出にくい、量が極端に減る

急を要さない場合は救急受診はしない

どんな病気でも、早期に診断して治療を開始すればより早く治癒し、重症化も予防できることは確かです。しかし、上記のような急を要する症状が出ていない場合は、できるだけ日中に通常の診療体制にある医療機関を受診しましょう。救急受診で余計な体力を消耗させないようにすることが大事です。

発熱に関する信頼できる情報は?

国保旭中央病院 熱がでるとき

https://www.hospital.asahi.chiba.jp/section/consultation/pediatrics/file-003.html

CAPS CLINIC こどもが熱を出した時の対処法 解熱剤の正しい使い方

https://www.caps-clinic.jp/netsu